【信用取引コラム 実践編】
第3回 売り銘柄の見つけ方(1)
2014.12.08
前回、「天井三日、底百日」から買いより売りの方が物理的に有利と申し上げました。信用取引と言う武器を手に入れ、売りと言う有利な世界で使いこなすことが出来たら、投資家としてのレベルは格段に上がると述べました。空売りを日常的に行っているヘッジファンドのやり方を参考に、一般投資家が出来る方法を2回に分けて紹介します。
ヘッジファンドの空売りの特徴に、借株契約が有ります。通称プットスルー契約と言って、ヘッジファンドの資産の保管を行うプライマリーブローカーから一括で株を借ります。この契約によって自社ヘッジファンドの名前が出ず、プライマリーブローカーの名前で空売り報告が出ます。個人投資家が空売りする時日証金から株を借りますが、この辺の仕組みはほぼ同じです。
プライマリーブローカーには保管業務中心のモルガンスタンレーやUBS証券、自己ポジションで裁定取引や通常の空売りなどを行うゴールドマンサックスやバークレーズ証券等があります。しかし、機関投資家の大きな売り手口は空売り残高情報を東証に届けなければなならず、その際には名前がでます。発行株数の0.25%を超える空売り残高がその対象で、東京証券取引所ホームページの公衆縦覧書類をクリックして、空売り残高を再度クリックするとそのすべてを見る事が出来ます。ところが取引所は今回、この空売り筋の「利便性」を考慮して、報告は0.2%以上になるけれども、公表つまりホームページに載せるのは0.5%以上に改定しました。利便性を考慮するという事ですから、空売り筋も取引所の大事なお客様という事で、図らずも、前回の「買いが善で売りが悪ではない」ことを、取引所が証明している事になります。さて、その空売り残高情報を見ますと、空売りファンドとして、OXAM QUANT FUNDが昨今大変注目されています。リーマンショックの少し前、2006年ごろから突如出て来たファンドで、1000番台~9000番台まで幅広く空売りポジションを組んでいると思われます。名前からオックスフォード大学の関係者が理論指導しているとか、オックスフォード大学の余資運用だとかの噂がありますが定かでありません。一説には資金は2000億円超、スタート直後から年13%~25%の二けた利益を上げているとの事ですが、2012年末からのアベノミクスの上昇相場では苦しいのではないかと思いますが、現在も元気に空売り残高情報に登場しています。私の推測ですが、まず売り銘柄が決めてあると思います。それも特別な銘柄以外はすべて売りと言った感じです。銘柄が多いのでクオンツ運用的な部分もあって、相場が崩れかけた時には一斉に売って来ます。また細かい運用もします。移動平均かい離率の高いものや急騰したものを個別に売る事もあります。意外に、中小型株の売りも躊躇しません。
売り銘柄の特徴は、やはりPER割高な銘柄が多いようですが、割高だけでは無く株価の動きも重要視しており、比較的ボラティリティの高い銘柄を選んでいるように思われます。ちなみに建設株では、スーパーゼネコンではなく、三井住友建設、東亜建設、五洋建設と言った多少仕手色の強い銘柄が登場します。それは、他業種でも同様で、旭硝子ではなく日本板硝子、住友大阪セメントではなく日本コンクリート、以下合同鉄、大平洋金属、ツガミ、OKKなどが空売り残高情報に見えます。ただ空売り公表が0.5%以上なので、大型株でそれを越すのは相当大きな株数になり、本当は大型株も売っているけれど比率に到達していなので見えていないのかも知れません。
再度になりますが、空売り個別銘柄情報は東証のHP⇒マーケット情報⇒公衆縦覧書類⇒空売り残高です。ぜひ見てご自身で何かを感じてください。一般個人投資家が参考にするには少し難しいかもしれませんが、PERが高くて、比較的ボラティリティーの高い銘柄、つまり割高なのに比較的値動きが良いものが空売り銘柄候補という事でしょうか。
次回はもう少しわかり易い一般的なヘッジファンドの売り銘柄を見て見たいと思います。
東京証券取引所
平野 憲一(ひらの けんいち) |
この情報は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としてはいません。又、その正確性、安全性等について保証するものではありません。
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