【信用取引コラム 実践編】
第7回 移動平均と信用取引 「最適化のわな」
2015.02.09
前回で、筆者の友人がやっている「トップ・ボトム・ヘッジ付き」法をご紹介しました。1番近い高値安値(マイナートップ・マイナーボトム)を売り買いのタイミングに使う方法です。機械的な方法なので、どこかでパソコンのプログラムが売ってそうですね。
しかし、所謂必勝ソフトと称されるものは眉唾ものと考えた方が良いと思います。以前、ある週刊誌の依頼で、デイトレ必勝ソフトを使って大儲けしている投資家にインタビューをしようと探したことがありますが、見つかりませんでした。理由は2つあると思います。1つは、本当に必勝ソフトがあったら世に出て来ません。当然、それを使って裏で大儲けしている投資家まで辿りつけません。2つ目は、ほとんどのソフトが「最適化ソフト」で、儲けている人がいると言う情報で、訪ねて行ったときにはもう儲けている人ではなくなっているという事ではないかと思います。
「最適化ソフト」とは、過去の市場をいろいろな条件で売買した時、最も利益が上がる方法、最適な方法を探し出して売買するソフトです。昔、相場師は一生をかけて最適な方法を探しましたが、今はパソコンに精通している方なら短期間で探し出すことが出来るでしょう。しかし、昨日まで最適な方法は、今日からその順位を下げ始め、いずれ最も適していない順位まで下がって、その後平均的な順位に落ち着くと言うのが統計の基本です。
一声を風靡したグランビルの法則は、移動平均の組み合わせで、短期線が中・長期線を下から上に抜いた時、ゴールデンクロスと言い、そのタイミングで買うと儲かると言う法則でした。逆がデッドクロスです。このデッドクロスやゴールデンクロスと言う言葉は今でも使いますが、買い場であるゴールデンクロスのところが、絶好の売り場になるケースも多く、信頼性は低下しています。ところが、短期線と中・長期線に、1日刻みの数字を入れると、組み合わせは無限的な数になりますが、パソコンで比較的短期間に最も儲かる組み合わせを探し出すことが出来ます。例えば、4日移動平均と53日移動平均を組み合わせると莫大な利益が出ているとか・・。すわ、必勝法発見!と意気込んで実行したがさっぱり儲からない。前述の統計学的理由により、これを「最適化のわな」と言います。
移動平均そのものは売り買いの平均単価なので、信用取引の参考には大いになります。特に、75日移動平均(約3か月)の上か下かで信用取引の売り方、買い方の勢力が一気に変わりますので、要注意のポイントです。
さて、筆者の友人のヘッジの方法ですが、以前は先物でやっていたようです。しかし、担保計算が2重になりますし、限月交代時の煩わしさ等で、最近はもっぱらETFの空売りです。2-3割のヘッジ売り建玉を持っていますが、売り玉と買い玉の関係も同じ信用取引の土俵の上でのことなので、すっきりしてしっくりすると言っています。そうは言っても、例えば順調に買い銘柄が上昇して100万円の評価益になった時、ヘッジ売り玉が30万円の評価損では、高い保険料を払っているようで不愉快なので、日々高安の機会を見て頻繁に損出しをして、ヘッジ玉の評価損を出来るだけ小さくしています。この作業が功を奏したのが、昨年の黒田バズーカ第2弾で、先物中心に踏み上げ相場が発生した時です。トータルでは当然プラスでしたが、日経平均中心に上がった為、ヘッジ部分にかなりの損失が発生し、ヘッジはずしの気持ちになったそうです。もし、ヘッジ部分の評価損を減らしてなかったら、耐えられなくてヘッジを外したかもしれないと言っています。ヘッジ売り玉が踏みあげられて高いところで外したらヘッジの意味がありません。心理的にそうならないような工夫は必要です。相場に対して強気の投資家がヘッジ売りをする事には抵抗があるかも知れませんが、何が起きるか分からないのが相場です。予想もしなかった急落に遭遇した時、このヘッジ売り玉は投資家に大きな2つのメリットを与えてくれます。それは次回。
平野 憲一(ひらの けんいち) |
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